現場とのコラボレーション
作成者: グレース・エリス
2022 年 1 月 6 日
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「建設業におけるコラボレーション」とは、簡単に言えば、一つのプロジェクトの目標に向かってチームが協力し合うことです。ゲートキーパーのお世話になったり、遠くのオフィスに出向いたりすることなく、誰もが、いつでもプロジェクトの主要な計画や目標にアクセスできます。
強固なコラボレーション体制が構築されている場合、チーム メンバーはリソースや知識を出し合い、個人的な目標よりもプロセス全体のスケジュールや予算で決められた共通の目標を達成することを優先します。もちろん、これこそが、プロジェクトの理想的な在り方です。
弊社によるFMI Corporation との共同レポート、「信頼の重要性: 低い信頼度の高い代償」では、最も信頼度の高い建設会社の 43% が、プロジェクト間でのコラボレーションを重要視していることが示されています。しかし、今日の業界の現実を鑑み、建設会社はどのようにすれば効果的に信頼とコラボレーションを育むことができるのでしょうか?
主なポイント
従来、建設業は細分化された業界です。チームが結束して働かないことを進んで選んでいるわけではありません。コラボレーションにおける障害の多くは、欠陥のあるシステムそれ自体によるものです。
建設業界は競争が激しく、各関係者はその小さなパイを奪い合うように競争しています。チーム メンバーは、プロジェクトの長期的な最終目標よりも、短期的な個人目標を達成することに関心があることが多いのです。
大多数の契約においては、それも特に設計・入札・建設といった従来の遂行方法を採用している場合、仕事のそれぞれのセグメントについて作業内容が定義されるものの、それらが全体でどのように関連しているかについては示されません。このため、関係者はそれぞれ異なる狭い視野で物事を考え、対立的な解決策をとることになります。
ある電気関連の請負業者はこう指摘します。「従来、建設プロジェクトは敵対的な環境の中で行われてきました。建設チームの各メンバーは、適正利潤を得るために他のメンバーとの競争を強いられるため、遅延、対立、論争などはよくあることです。」
「また、業者間の調整不足、図面や仕様書の不備、担当者からの資金提供の不足によるキャッシュ フローの滞り、さらなる対立や遅延が発生し、進行が阻害されます。下請業者はプロセスの対等なパートナーとして扱われることはほとんどなく、懲罰的な契約条項がチーム メンバー間の信頼関係を低下させます。」
不平等性、不完全性、コミュニケーション不足、訴訟などの原因により、理想的なパートナーシップが構築されることは非常に稀です。(実際には、絶対にないと言い切っても差し支えないでしょう。)しかし、多くの企業が現状に甘んじているのは、システムを揺るがし、コラボレーションやその構築に本当の意味でコミットすることで対峙しなくてはならない、いくつかの副作用に怯えているからなのです。
コラボレーションに共通する課題には、以下のようなものがあります。
真の問題は、単に変化を起こすのが難しいという理由で、時間、資金、そして作業者の賛同を一生失ってもいいのかどうかということです。
…もちろん、答えるまでもないでしょう。
これ以上の動機付けが必要と感じている皆様の意気込みを高めるために、コラボレーションを強化することで期待できる主な効果をみてみましょう。
例えば、共同論文を書くときに、参加メンバーにそれぞれの担当セクションを割り当てるだけで、各メンバーが自分以外のメンバーの担当する内容がわからない状態でやみくもに作業をさせたとしたら、その論文は間違いなくめちゃくちゃなことになるでしょう。おそらく合格点を得るだけでも、間違いなく大幅な編集と手直しが必要です。当初から全員に同じアウトラインを与え、完成まで足並みを揃えた方が良くはありませんか?
コラボレーションと建設を促進することは、この例で言うアウトラインを与えることに似ているかもしれません。全員に明確なタスク リストを渡し、そのタスクが全体にどのように貢献しているか、また、他の人が全体に貢献するために何をしているかを明らかにすることで、それぞれの部門、請負業者、利害関係者を敵視するのではなく、感謝し、信頼することができるようになるのです。
結果的に、以下のようなことにつながります。
また、コラボレーションが、類似性を活用したより良い協力関係を築き、プロジェクト全体の質を向上させ、チーム間による知識の共有を促進することが研究で示されています。
本当の意味で失うものがあるでしょうか?
優れたコラボレーションとは、合理的なワークフローを特徴とする、誰もが自分の役割を理解し、必要な情報を得るための問い合わせ先を把握し(つまり、適切なコミュニケーション方法を知っている)、そして安心して自分の仕事を完了し、他の人も個々の仕事を安心して完了することができる状態のことです。
具体的に、共同で行われる建設プロセスにおいては以下のようなことが実現されます。
信頼の構築
信頼は良いコラボレーションの基礎となります。これがないと、個人もしくは部門全体においても、自分の仕事や目標を優先し、しばしば他人を犠牲にしがちです。すでに説明したように、このような信頼関係における距離感は、コスト超過の最も一般的な原因の一つです。
容易性
コラボレーションは通常業務から外れるものであったり、ハードルとして立ちはだかるものではありません。難しければ、実現しないまでです。対照的にコラボレーションを成功させるのは簡単なことです。チーム メンバーが同時に、そして直感的にコラボレーションできるようになります。シームレスな共同作業による建設は、通常、以下のようなスマート ツール アプリケーションやアプローチの応用によるものです。
包括性
真のコラボレーションは、包括性の上に成り立つものであるべきです。今日における多くの研究やソート リーダーシップの多くは、包括的な戦略は、しばしば停滞をもたらす排他的な戦略よりも、はるかに優れた成長につながることを示しています。包括性とは通常、経歴、民族、年齢や経験などの多様性を指す言葉です。しかし、情報へのアクセスに関しても、包括的であることが不可欠です。情報が厳しく管理されると、誰も得をしません。
役割と責任を明確にすることの重要性
コラボレーションを成功させるためには、すべての関係者への橋渡しをすることに加え、役割と責任を明確にする必要があります。誰もが自分の担当を把握し、さらにそれぞれの関係者が次の命令系統を把握できるようなワークフローを構築する必要があります。
質の高いコミュニケーションの優先
コラボレーションには、コミュニケーションが必要不可欠であることを理解することが重要です。オートデスクと FMI による共同レポートでは、「手戻りの約半分は、プロジェクト関係者間のコミュニケーション不足と、プロジェクト情報の不備が原因である」とされています。
理解力の高い、成功を遂げた建設会社は、クラウドベースで簡単にアクセスできるシステムを構築し、文書のアップロードやダウンロード、リアルタイムでの閲覧、マーク アップ、質問やそれに対する回答、資料請求、WiFi の無い環境やリモート環境でのシステムへのアクセスなどを容易にすることで、これを回避しています。すべてのステップにおいて、コミュニケーションを優先させる必要があるのです。
Mortenson 社とMcCarthy 社の両社によると、ここ数年で見られた最も大きなプロセスの変化は、建設前の段階、特に設計と建設前計画との間において、主要なプレーヤーによるコラボレーションが強調されていることです。
「デザインイ ンテグレーションの進化を実感しています」と、McCarthy 社の施工準備担当ディレクターである Angeline Gleason 氏は語っています。「現在、建築設計者や構造エンジニアはゼネコンと肩を並べて仕事をしています。建築設計プロジェクトがますます増え、設計と見積もりや目標予算との整合性を図ることが改めて求められているのです。」
Mortenson 社の積算担当者である Doug Heinrich 氏は、この体験について次のような形で共感を示しています。「10 年前、施工準備管理者(そのほとんどが積算担当でした)と呼ばれていた我々は、設計段階管理者となりました。今では、プロジェクト マネージャー、積算担当者、建築設計者が一緒になって、より総合的な視点を得られるようになりました。」と彼は言います。
建設前の計画段階で、これらの役割を与えられたメンバー全員が平等に意見を主張できると感じることができれば、長期的な成果にもつながります。レポートによると、信頼とコラボレーション能力が最も高い会社の従業員は、お互いに助け合うことに関して、より高い能力を発揮する傾向にあり、49% が日常的に期待以上の仕事をこなしていることがわかりました。このような組織では、よりポジティブな職場文化が醸成されることにより、ビジネスの成功が見込めるでしょう。
組織の長期的な成功にとって、社内における信頼性がいかに重要であるかを明確に理解していたとしても、それをどのように達成するかを具体的に示すことは困難です。
「事業開発、施工準備、オペレーションの間で常に連携を図っています」と Angeline 氏は言います。
Angeline 氏は、ビジネスにおける将来的なコラボレーションを促進するために、教育が果たすべき役割を指摘しています。
「ベテランのプロフェッショナルに代わって若い人材が活躍している今、新しい施工準備世代を一刻も早く育成することが急務となっています。1 つの方法として、プロジェクトのさまざまな段階(調査から積算、設計管理から建設まで)を通じてそれぞれの人材を循環させることで、クロストレーニングを行うものがあります。」と彼女は言います。「これは、チーム ワークを促進し、プロジェクトのライフサイクルをより深く理解することに繋がり、施工準備の専門家が成功する計画を策定するための準備となります。現場での施工管理をしたことがない人材に施工計画を立てさせたり、計画やその立て方を理解していない人材に施工や建設を遂行させるのは難しいでしょう。」
Doug 氏は、関係者が異なるオフィスや現場に散らばっている場合は特に、早期に関係者を取り組むことが重要であると言います。
「私の最大のアドバイスは、できるだけ早期に全員を話し合いに参加させ、価値を示し、賛同を得ることです。」と Doug 氏は言います。
もちろん、コラボレーションのメリットを知っているだけでは、実際に結束力を高めることはできません。共同的な企業文化を構築したいのであれば、行動に移すしかありません。動いて手に入れるのです。
以下では、建設業における協力的な文化を構築(そして維持)するためのベスト プラクティスと戦略について説明します。
プロジェクト業務の方法を評価する
もしあなたが担当者で、設計・入札・建設といった伝統的な建設遂行方法を用いているとしたら、それはプロジェクト チームのコラボレーションに対する妨げとなっている可能性があります。従来の遂行方法では、個人の役割や作業範囲に狭く焦点を当てるため、全員が協力するのではなく、それぞれの目標に向かって別々の道を歩むことになり、結果としてチームをバラバラにしてしまう可能性があります。
一方、インテグレーテッド プロジェクト デリバリー(IPD)やリーン コンストラクションなど、プロジェクトを俯瞰的に見る最新の手法では、より良い結果を得ることができます。プロジェクトの早い段階から正式なプロセスとしてコラボレーションを根付かせることにより、それを完成まで継続できる可能性が高まります。
多様性の受容
多様性を認め、受け入れなければ、建設業でコラボレーションを実現することは難しいでしょう。それは、つまり、あなたのチームが多様な性別や背景、文化や言語をもつ人々、違ったアイデンティティやライフスタイルを持つ人々により構成されていることを理解することです。
忘れてはならないのは、単に多様な人材を採用することと、多様な人材を取り込むことは別だということです。すべての作業者の知識と能力を活用する共同的な職場を構築したいのであれば、一人一人の声をくみ取る必要があります。特に、英語が母国語でないメンバーが多数在籍する多文化的なチームを受け入れる場合、言語の障壁を緩和する適切なプラットフォームやツールを提供することが重要です。
コラボレーション ツールの活用
請負業者、設計者、サプライヤーおよび関係者による情報のやり取りは、リスクの高いビジネスです。また、相互理解の齟齬やデータの損失が発生する余地も多くあります。このようなギャップを解消し、建設業におけるコラボレーションを促進するためには、適切なツールを活用し、計画的および段階的に物事を運ぶことが重要です。
ビルディング インフォメーション モデリング(BIM)はまさにそのようなツールで、設計段階からコラボレーションをスタートさせることができます。部門全体によるタスクや職務を組み込んだ時間的制約の強い 3D 計画を作成することで、サイロ化した活動やチームごとに細分化された認識を減らし、最終目標への結束力を高めることができます。これにより、統合への機会が増え、また、現場とのコラボレーション ソフトウェアを導入することで、全員が同じ情報に同時アクセスできるようになります。
フィードバックによるアカウンタビリティの促進
建設業におけるコラボレーションでは、説明責任が非常に重要です。コミュニケーションには透明性が必要であり、積極的にチームからのフィードバックを求め、また、引き出さなければなりません。活発な対話は促さないと得ることができません。これは、反対意見や傷ついた感情がなくなることを意味しているわけではありません。ただし、それらはいかなる時にも生産性の低い方法で行われるでしょう。フィードバックを求めることにより、それらを上手に回避し、ポジティブな勢いを保つことができるのです。
人間性を重んじる
最終的に、建設業界は人間によるものだということです。一緒に仕事をしたいと思わせることができれば、コラボレーションは自ずと生まれてくるのです。定期的な対面によるチーム診断やトレーニングおよびワークショップなどを実施すると良いでしょう。
常に感謝の意を示し、自発的な行動には報酬を与えましょう。また、社会的な活動は、チームの絆と団結力を高めるので、決して悪いことではありません。一緒に過ごしたい人同士であれば、一緒に仕事もしたいと思うでしょう。単純明快です。
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確かに、信頼やコラボレーションという言葉の響きはいいですが、実際にビジネスで成果を出すとなると、実体のないものに感じられることも多いでしょう。信頼性の高い建設企業になることの具体的な見返りは何でしょうか?
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信頼度の高い企業には、具体的に、以下のような特徴があることがわかっています。
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寄稿者のご協力に感謝申し上げます。 Autodesk Construction Solutions、コンテンツ マーケティング マネージャー、マッキンジー・グレゴリー
グレース・エリス
Autodesk、Digital Builder Blog 編集主任