投稿者: Andrew Birmingham
2021年12月7日
午前 9時
世界銀行によると、インフラ工事、建設工事、施設運用によって排出される二酸化炭素は、世界全体の排出量の70%を占めています。その一方、プロジェクトに必要な資金であるキャッシュが、サスティナビリティ投資ファンドに流れる傾向が強まっており、Bloomberg Intelligenceによれば 2025年までに6,100兆円(53兆ドル)に達すると予想されています。
つまり、ネット ゼロの実現は地球環境の保全において緊急性の高い課題ですが、それと同じくらい、経済的にも緊急性の高い課題となっています。
4つの業界関係者による新しいレポートでは、組織がネット ゼロへの移行を加速するために、ビジネス全体を対象とした資産のライフサイクル全体にわたるシステムベースのアプローチが必要であるとされています。
Australian Constructors Association、Consult Australia、Infrastructure Sustainability Council、オートデスクは、インフラ パイプラインの設計と建設を通じてネット ゼロの未来を加速するため、業界のサポートに関する共同レポートをリリースしました。
調達、資材、手法、テクノロジー、人材担当者はすべて、このレポートに従って対応する必要があるでしょう。
このレポートの結論は、2016年に、Man Yu氏、Thomas Wiedmann氏、Robert Crawford氏、Catriona Tait氏によって公開された「オーストラリアの建設セクターの二酸化炭素排出量」と呼ばれる論文と大半が一致します。この論文は、「政策と規制の大部分は、建物からの直接的な排出量を削減することに焦点を当てていますが、セクター全体による排出量に注目すべきです。なぜなら、この排出量が、ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量の10~97% を占めているからです」と締めくくっています。
同様に、今年11月に公開されたCEFCによるレポートは、「建設セクターが二酸化炭素排出量を削減できる大きな可能性があり、サスティナブルと評価されたインフラ プロジェクトが、このような評価を受けていない同様の設計と比べて平均で最大33%の削減を達成していることが判明しています」と締めくくっています。
オートデスクの業界戦略マネージャ(ACS、APAC 建設ソリューション)であるスミット・オベロイは Digital Nation Australiaに対して、二酸化炭素排出量の概要を国別に比較することは困難であるとしながらも、2015年までにオーストラリアは、世界第15位の温室効果ガス排出国となったと語りました。「オーストラリアの1人当たりの排出量は世界平均の約3倍です」
今朝リリースされた「インフラ パイプラインを介して実現するネット ゼロの未来」と呼ばれる新しいレポートは、「オーストラリア全体にわたるインフラと排出量に関して、インフラが国全体の排出量の約70%を占めており、約15%(または年間約8,700 万トンの二酸化炭素)が、そのインフラの納品と操業が直接の原因となっていると想定されている」ことを明らかにしています。
ただし、これらの著者が伝えている朗報は、インフラ業界が二酸化炭素排出量の削減に及ぼす可能性がある影響力を既に示し始めており、ごく最近実施されているインフラ プロジェクトでは、アセットのライフサイクル全体にわたる材料から排出される量と同等の二酸化炭素の11%の削減とエネルギーの68%の削減を組み合わせて実現できるということです。
2030年が迫る中、オーストラリア政府だけで2024年までに19兆円(1,660億ドル)が費やされる予定ですが、やるべきことはまだ数多くあります。
「より進歩的な行政の管轄区域では、気候変動に関する活動、回復力、材料とリソースの目標を含むサスティナビリティ成果を促進しています。最も進歩的な提案者は、持続可能性の達成度評価に関して第三者によって保証された一貫したアプローチを採用しており、2012年以降、Infrastructure Sustainability Councilに 23兆円(2,000億ドル)を超す出資を行っており、IS Rating Schemeを導入しています」
レポートで指摘されているように、サスティナビリティに投資しようとしているのは政府だけではなく、金融セクターの主な焦点となっています。「Global Environmental, Social and Governance(ESG) の投資資産は現在、2025 年までに6,000兆円(53兆ドル)に達すると想定されており、これは、管理下にある1.6京円(140兆5,000億ドル)の合計資産の3分の1を超えています。投資家は脱炭素を期待しており、気候変動に対する対応に意欲的でないと、余計な投資が必要になったり、成長鈍化につながる業績リスクや外部コストの増加リスクが生じると考えています。」
Australian Constructors Association の CEO である Jon Davies 氏は、「インフラに対する記録的な投資により、建設業界がネット ゼロに対するソリューションの一部となる機会が生まれます」と述べています。「私たちは誰にも果たすべき役割があり、その役割は協力して実行する必要があります」
このレポートでは、アセットのライフサイクル フェーズに基づく主な推進手段のマッピングも行う多くのツール、問題とソリューションの再考や再定義、カーボンの多い材料の削減、アセットの設計と施工に対しての再生型アプローチの徹底に至るまで、さまざまな意思決定を促進、ガイドするネット ゼロの提供モデルが定義されます。
この業界はこれまでに多大な実績を残してきたが、二酸化炭素排出量の削減による影響を既に示し始めていると、Infrastructure Sustainability Councilの CEO、Ainsley Simpson氏は述べています。「Infrastructure Sustainability Rating Schemeが過去4年間に認定した24の 竣工プロジェクトにより、ライフサイクル全体にわたって二酸化炭素排出量が2,650 万トン削減されましたが、これは2020年にオーストラリア経済全体にわたって節約された2,600万トンの二酸化炭素排出量に匹敵します」
このフレームワークのリリースは、COP26 での気候変動に関する宣言に沿っています。この宣言で、地球の気温変動を2030年までに2度以内、できれば1.5度以内に抑えるため、脱炭素を加速することが求められました。
「ネット ゼロの加速を達成し、私たちのセクターの世界的な競争力を維持するには、業界全体にわたる強力なリーダーシップとコラボレーションが必要になります」と、Consult AustraliaのCEO、Nicola Grayson氏は述べます。
Grayson氏によると、ネット ゼロは皆が分かち合う責任であり、このレポートを作成した組織はこの共有の成果を達成するために必要な継続的な改善を促進することに取り組んでいます。
このレポートによると「デジタル テクノロジーの出現に伴い、資産の所有者は、既存のアセットの実績を包括的に監視し、最適化しやすくなり、改修と新規建設のどちらを選択するかの意思決定を下しやすくなっています」
たとえば、このレポートの著者は、設計フェーズでは、すべての関係者と協力し、二酸化炭素排出に対する影響力を最大限に高めると同時に、回復力とアセットの生涯価値を高める機会があると主張しています。
さらに「デジタルの設計方法、標準、テクノロジーの進化により、ネット ゼロのビジョンを実質的に導入するプラットフォームが提供されます」
オートデスクのオーストラリア、ニュージーランドの地域担当責任者であるAndy Cunningham氏は、インサイトを発見し、より適切な意思決定や優れた成果達成に必要なツールをもたらすテクノロジーによってインフラ業界はサポートされるだろうと述べています。
「ソフトウェアは、複雑なプロセスを自動化し、イノベーターが設計、製造、所有、運用すべてを改善するため、データを実行可能なインサイトへと変換するでしょう。クラウド ソリューションや連携したデータ環境により、テクノロジー、プロセス、サプライチェーン、業界全体にわたるイノベーションが推進されます。このような機会は加速する一方です」とCunningham氏は述べています。
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